コラム

2016.07.26更新

交通事故にあって車両損害を受けた場合、修理費、代車使用料、格落ち損等以外に、慰謝料が認められるかという問題です。
民法710条は、「他人の身体、自由若しくは名誉を侵害した場合又は他人の財産権を侵害した場合のいずれであるかを問わず、民法709条の責任を負う者は、財産以外の損害に対してもその賠償をしなければならない」と規定しています。
この規定の文理解釈によれば、物件損害についても慰謝料の請求は認められるようにも考えられます。
しかし、多くの裁判例では、物件損害の賠償が認められれば、精神的損害に対する慰謝料は認められないのが通常です。
なぜなら、財産権の侵害によって精神的苦痛を被ったとしても、被害者は財産的損害の填補を受けることによって、財産権侵害に伴う精神的損害も同時に填補されたと解されるからです。
従っ て、物件損害について慰謝料を請求しうるためには、目的物が被害者にとって特別の愛着を抱かせるようなものである場合や、加害行為が害意を伴うなど相手方 に精神的打撃を与えるような仕方でなされた場合など、被害者の愛情利益や精神的平穏を強く害するような「特段の事情」が存することが必要であるとした判決 (東京地判平成元年3月24日)があります。
この判例では、被害車両メルセデス・ベンツの損傷について、慰謝料は認めませんでした。
従って、車両損害の場合、慰謝料まで請求することは、通常認められないことになります。
多くの裁判例を見ると、「特段の事情」としては三つに分析されています。


(1)被害物件が被害者にとって特別の主観的・精神的価値を有し(それが社会通念上相当と認められること)、単に財産的損害の賠償を認めただけでは償い得ないほど甚大な精神的苦痛を被った場合。
例えば、①特別の愛着を持っているペット、②深い敬愛追慕の念を抱く墓石・骨壺、③代替性のない芸術作品などが、被害物件である場合です。

☆東京地判 平成15年7月28日
個展等を開催する陶芸家の自宅と隣家間のコンクリート塀に加害車が衝突し、屋外作品置き場と陶芸品を破損した事案。
陶芸家に精神的苦痛を与えたとして100万円の慰謝料を認めた。(陶芸品の損害額の確定が困難であった)


(2)被害物件は、(1)のような価値は有しないが、被害物件の損傷に伴い生活の平穏が害され、又は不自由、不便な生活を強いられるなどの不利益を受けるといった、いわゆる人格的利益の毀損がある場合。
例えば、被害物件が居住用ないし営業用の建物である場合である。

☆岡山地判 平成8年9月19日
深夜、大型自動車が運転操作を誤り、沿道の納屋に激突して家屋及び庭を損壊した事案。
住人が受けた精神的苦痛に対する慰謝料50万円が認められた。

☆大阪地判 平成元年4月14日
深夜、店舗兼居宅に自動車が突入し損壊した事案。
まかり間違えば人命の危険も存した上、家庭平穏を侵害されたことによる有形・無形の損害は、財産的損害の填補のみによっては償い切れにものがあるというべきである。精神的苦痛を慰謝するに足りる慰謝料として30万円が相当。

☆松江地裁益田支部 昭和52年4月18日
深夜、保冷車が沿道家屋に突入し、その家屋を大規模に損壊した事案。
被害者は妻と住み慣れた家屋を離れて、応急修理がすむまで約3、4ヶ月も納屋暮らしを余儀なくされ、その間の心労や生活上の不便、不自由さは甚大なものであったとして、慰謝料60万円が相当とされた。

☆横浜地判 平成6年11月28日
中古車展示場への飛び込み事故の事案。
中古車4台の損傷、後始末費用、弁護士費用では包摂しきれない、本件事故ゆえの金銭的・労力的負担や、本来的業務にとってのマイナス要因という有形・無形の損害が発生したと認められ、中古車4台の損傷による損害額3,381,456円の約5%である17万円を認めた。


(3)事故態様が極めて悪質な場合(飲酒運転など)、当て逃げのため被害者において加害者が誰であるかを突き止めるため手を煩わせたなど、加害者側の悪質な事情がある場合。

投稿者: 小山晃法律事務所

2016.07.26更新

車両が事故により損傷を受けた場合、どのような損害が認められるのか。
(1) 修理費用
車両が損傷を受けた場合、修理費用の賠償が原則です。修理すれば車両は乗れるからです。
新車購入の翌日の事故、2週間後の事故であっても、新車購入費用の賠償は認められません。
修理が不可能なほどに物理的に破損したとき(全損)は、修理ができないので代車購入費用が損害とされますが、そのときの代車は事故車と同一車種、年式、型、同程度の使用状態、走行距離等の車が基準になります。
ま た、修理が可能であっても、修理費用が事故当時の車の時価額を上回るとき(経済的全損)は、修理費用ではなく車の時価額が賠償の対象となります。民法の不 法行為制度は、損害を填補して不法行為以前の被害者の利益状態に戻すという制度であり、不法行為以前よりも被害者に有利な地位を与えるものではないからで す。
(2) 格落ち(評価損)
破損した車を修理しても、技術上の限界等から回復できない顕在的または潜在的な欠陥が残存した場合(たとえば、機能的障害が残存した場合、耐用年数が低下した場合等)には、修理費の他に技術上の減価による損害が認められます。
現実の中古車の取引において、事故歴・修理歴があることで下取り価格が低くなることから認める見解もあります。
現実に修復されない瑕疵が残存し、かつ下取りされない限り、その評価価値の下落は表面化しないため、評価損の額をどのように決めるかが問題となります。
判例の中には、修理費の20%、30%、10%とするものが多く見られます。
(3) 代車使用料
車両が事故により使用不能となり、レンタカーなどの代車を使用する必要のあるとき(しかも現実に使用したとき)は、代車使用料が損害となります。
代車使用期間は、修理に必要な相当期間や買換に必要な相当期間とされます。修理ですと1~2週間が、買換ですと1ヶ月程度が通常ですが、部品の調達や車両入替の必要があるときは、長期間使用が認められることがあります。
(4) 休車損
営業車両では、事故のため休車することにより過失利益が生じます。これを休車損といい、タクシーや営業用トラックなどの場合、休車損が認められます。
休車期間は、代車の場合と同様修理ないし買換に必要な相当期間です。
休車損の算定は、1日あたりの売上高から諸経費(ガソリン代、オイル代の燃料費等変動経費)を除き、これに相当な休車期間を乗じて行います。
収入を事故前1年ないし3ヶ月の数値により、同期間の収入総額から休車によって支出を免れた経費(燃料、修理代、有料道路代等)を控除して出した1日あたりの営業利益をもとに算出することになります。

投稿者: 小山晃法律事務所

2016.07.26更新

損害賠償の方式について

損害賠償の原因となった事故(不法行為)と同一の原因によって利益を受けている場合に、この利益を損害額から控除して賠償額を決定することを言う。
民法は、損益相殺について規定を設けてはいないが、民法709条の「損害」は損益相殺をした後の損害を意味すると解されている。
控除される利益は、不法行為と相当因果関係が認められるものに限られます。
(1)生命保険金について
死亡事故の遺族が生命保険金を受け取ったとき、加害者に対し請求する損害賠償額から、生命保険金は控除されるか。
生命保険金は、不法行為と相当因果関係にある利益ではなく、控除されないとされている。
生 命保険契約に基づいて給付される保険金は、不法行為とは別個の保険契約に基づき、既に払い込んだ保険料の対価たる性質を有し、もともと不法行為の原因と関 係なく支払われるべきものであるから、たまたま不法行為により被害者(被保険者)が死亡したためにその相続人たる者に保険金の給付がされたとしても、これ を不法行為による損害賠償額から控除すべき理由とはならないからです。
(2)損害保険について
生命保険と同様、既に払い込んだ保険料の対価として保険金は給付されるので、損益相殺は、行われない。
ただ、損害保険には、生命保険とは異なり、請求権代位の制度があり(保険法25条)、保険会社が保険給付を行ったときは、保険会社は保険給付の限度で被害者の加害者に対する損害賠償請求権を取得します。
その結果、被害者の損害賠償請求権はそれだけ減少することになりますが、これは、損益相殺の原理によるものではなく、請求権代位の制度によるものです。

投稿者: 小山晃法律事務所

2016.07.26更新

損害賠償の方式について

民法は、損害賠償につき金銭賠償を原則とするが(417条、722条1項)、その賠償の方式については規定していません。
しかし、既に発生した損害(例えば治療費等)のみならず、将来発生する損害(後遺障害逸失利益・介護費用)の賠償方式として、現価に換算して損害額の全額を一括して支払う「一時金賠償」方式が一般的です。
「一時金賠償」方式の利点は、以下の通りです。
1 紛争の一回的終局的解決を図ることができる。
2 事故後の一時的な多額の出費(例えば、自宅改造)にも対応できる。
一方、次のような欠点も指摘されています。
1 重度の後遺障害の被害者が賠償金を受け取った後に死亡した場合、逸失利益は67歳まで稼働できるとして算定され、将来の介護費用は平均余命まで認められているので、もらいすぎではないか。
2 将来物価が上昇した場合、賠償金が目減りしてしまうのではないか。
3 一時金の換算にあたり、中間利息を民事法定利率年5%で控除するので、昨今の低い運用利回りしか期待できない経済状況が続いた場合、将来介護費用が不足してしまわないか。
そこで提案されてきたのが、「定期金賠償」です。
「定期金賠償」とは、死亡や身体障害に基づいて生じた損害を、定期的な金銭給付によって賠償する方式です。例えば、「生存する限り、1カ月ごと(あるいは1年ごと)に50万円を支払え」というものです。
定期金賠償は、一時金賠償の分割払いとは根本的に異なっています。一時金方式では、事故発生と同時に被害者の全損害が既に発生(確定)したものと観念され、従って賠償請求権は、既に発生した債権とされます。
これに対し、定期金賠償における各期に支払われる定期金(支分定期金)債権は、各定期(履行期)が到来する都度発生する将来の債権とされます。
一時金賠償の分割払いは、一旦確定した金額(総額、例えば1000万円)を1年ごとに50万円ずつ20年に分割して支払うというもので、総額が定まっており、支払期も確定しています。
これに対し、定期金は「生存している限り、1年ごとに50万円を支払え」というもので、支払の総額が定まっていないのみならず、将来的にいつまでその債権が存在しているかも定まっていません。
定 期金賠償方式は、一時金賠償方式の「もらいすぎ」の批判や、一時金に換算するときの中間利息の問題を回避できるという利点がありますが、一方支払う側が破 産等支払能力がなくなったときに現実に履行できなくなるという問題や、事故後の一時的な多額の出費に対応できるのかという問題、過失相殺される場合には将 来の介護費用に不足を来さないかという問題も指摘されています。
現実の訴訟では、いずれの賠償方式によるかは被害者の選択に任せられているのが実情です。 

*三重県の情報サイト「とうけい」に掲載された記事です。

投稿者: 小山晃法律事務所

2016.07.26更新

在宅介護(への移行)を前提として将来の介護費用はどのように算定すべきかについて述べます。

1  職業付添人介護を前提とするか、近親者介護を前提とするかは、具体的な事案での事実認定にかかっています。その時の判断要素は、①被害者の要介護状態 (後遺障害の内容・程度、被害者の状態・生活状況、必要とされる介護内容等)、②現在に至るまでの介護態勢及び介護者、③同居する近親者の有無及びその身 体的な介護能力(年齢、体格、体調等)、④同居する近親者の就労の有無、就労の意向、就労の実績等です。
多くの裁判の中では、近親者による介護が身体的又は精神的に不可能ないし困難であるという事情や、将来にわたる家計の維持のために近親者が就労する必要があるといった事情があれば、職業付添人介護が相当とされます。
また、一般家事労働を含めて就労可能年数を67歳で区切っていることに鑑みて、現在近親者介護が行われていても、近親者が67歳までは近親者介護、それ以後は職業付添人介護に移行するものとして算定を行う例も増えています。

2 将来の介護費用の額については、裁判例は、(1)近親者介護の場合と(2)職業付添人介護の場合に分けて論じています。

(1) 近親者介護の場合
後遺障害等級1級ないし2級の常時介護を要する場合では、1日8,000円が認められます。
もっとも体位変換も行えない遷延性意識障害や四肢麻痺の状態の被害者の介護で近親者の年齢、体力等から介護の負担が特に重いと考えられる場合は、1日8,000円以上が認められています。
ま た重度の高次脳機能障害の場合で自力歩行は可能で、一定の日常生活作動はできるものの、常時あるいは随時看護が必要な場合は、1日8,000円より低い金 額が算定されています。ただ被害者に暴力的傾向や、自傷他害のおそれが強く、希死念慮がある場合などは、介護による精神的負担が重いので、1日8,000 円が算定されています。
この場合、近親者の介護費用の額が入院期間中1日6,500円とされているのに比べて高いのは、症状固定時までは、被害者の症状が改善する可能性があるのに対し、それ以後は改善の可能性がない、従って介護の負担がより重くなるものと考えられるからです。

(2) 職業付添人の場合
裁判例では、1日1万円から3万円台の間で算定されています。
近親者介護と比べて高く算定されているのは、職業付添人の介護は専門的で労働の質が高いからであると考えられています。

*三重県の情報サイト「とうけい」に掲載された記事です。

投稿者: 小山晃法律事務所

2016.07.26更新

交通事故により重度の後遺障害を負い、そのために介護を要する場合には、平均余命までの間、将来の付添費(将来介護費、介護料)を請求することができます。
被 害者が現在病院や自動車事故対策センターの療護センター等の施設に入所中であるが、将来的には自宅へ帰って介護(在宅介護)を受けるものとして、将来の介 護費用等を請求できるかが問題となります。実際問題として、在宅介護における費用は、施設介護における費用より高額となる傾向がありますが、自宅での介護 の方が家族と接する機会も多く、生活の質の面でも在宅介護の方がより充実しています。
この点について多くの裁判例は、①施設の性格、②施設退所の 時期・蓋然性(がいぜんせい)、③在宅介護の可否に関する入所中の施設または医師の判断、④被害者の状況、意向、⑤近親者の意向、⑥被害者を受け入れる家 庭の状況、⑦在宅介護に向けた準備状況等を考慮して判断しています。

(1)療護センターの入所可能期間は、最長5年程度(平均3年半程度)とされており、入院中の病院がリハビリによる社会復帰あ  るいは在宅介護への移行をサポートすることを目標としておれば、在宅介護への移行は認められる要素となります。

(2)在宅介護の可否について、入所中の施設または医師の判断は重視され、被害者の状況及び家庭環境を考慮して、在宅介護は極めて困難であり、他の施設での介護が妥当と判断されれば、在宅介護への移行は認められなくなります。

(3) 被害者の状況・意向について、症状固定日までの在宅介護の実績があり、その間に特にけいれんも見られず、いわゆる植物状態にある患者としては状態が安定し ており、生命の危険を推認させる事情が認められない場合には、在宅介護への移行が認められます。植物状態にある患者であるというだけで、在宅介護への移行 が認められなくなるというものではありません。
また、意識が覚醒し、病状が改善してきた被害者が、自宅へ戻って生活することを強く希望している場合には、その希望は尊重されて、在宅介護への移行が認められやすくなります。

(4) 在宅介護に向けた準備状況として、既に在宅介護に向けて自宅の改造に着手しているとか、植物状態にある患者について、両親が退院後に171日間にわたり職 業付添人の援助を受けながら24時間の在宅介護を行ったという実績は、在宅介護への移行が認められる方向に働きます。

(5)近親者が働く必要があり、在宅介護を担当ないし補助することが困難であるという家庭の状況については、職業付添人等による援助を受けることなどによって、在宅介護を行うことは十分可能であるので、在宅介護への移行を考える上ではそれほど支障とはなりません。
裁判所において在宅介護への移行が認められないときは、患者側としては施設介護の継続を前提として将来の治療費、施設利用料及び介護費用を請求することになります。

次回には、在宅介護への移行を前提として、将来の介護費用についてどのように算定すべきかについて述べます。

*三重県の情報サイト「とうけい」に掲載された記事です。

投稿者: 小山晃法律事務所

2016.07.26更新

1 不法行為によって他人の身体、自由、名誉、財産権を侵害し、民法709条によって損害賠償の責任を負う者は、財産権以外の損害に対してもその賠償をなすことを要する旨規定されています(民法710条)。
  ここにいう「財産権以外の損害」、すなわち、精神的・肉体的苦痛による損害・無形の損害などの賠償のことを慰謝料と言います。
2 慰謝料額の算定については、諸般の事情を考慮して決定されますが、交通事故の慰謝料の算定にあたって考慮されるべき諸般の事情は、以下のものです。
(1)被害者側の事情
  ① 被害者の傷害の部位・程度・治癒に至る経過(入・通院の期間、日数等)
  ② 後遺症の有無・内容・程度
  ③ 被害者の家庭内の地位・扶養関係
(2)加害者側の事情
  ① 加害者の過失の程度(無免許運転・飲酒運転・居眠り運転・信号無視・著しい速度違反等)
  ② 加害者が現場から逃走したこと(ひき逃げ・あて逃げ)
  ③ 事故発生後に加害者が誠意のない行為を被害者に加えたこと(被害者への責任転化等、被害者の感情を逆撫でする行為)
3 慰謝料は本来的には、主観的に判断されるべきものですが、交通事故による慰謝料は、交通事故が多数発生しており、迅速にしかも被害者間で不公平のないように損害賠償額を決められるように、定額化されています。
 ① 傷害の場合の慰謝料
 (ⅰ)入・通院慰謝料は、重傷の場合とむち打ち症の場合で区別され、入・通院期間・日数に応じて決められています。
 (ⅱ)後遺障害の慰謝料は、後遺障害の等級に応じて決められています。
    1級2800万円 2級2370万円 3級1990万円 4級1670万円
    5級1400万円 6級1180万円 7級1000万円 8級830万円
    9級690万円  10級550万円 11級420万円 12級290万円
    13級180万円 14級110万円
 ② 死亡の場合の慰謝料
   被害者の家庭内の地位・扶養関係に応じて決められています。
 (ⅰ)一家の支柱の場合  2800万円
 (ⅱ)母親、配偶者の場合 2400万円
 (ⅲ)その他(独身男女・子供・幼児等)の場合 2000万円~2200万円
4 慰謝料を増額させる事情
  加害者に故意もしくは重過失(無免許・ひき逃げ・酒酔い・著しいスピード違反・ことさらに赤信号無視等)、または著しく不誠実な態度等がある場合は、基準額よりも増額されます。

*三重県の情報サイト「とうけい」に掲載された記事です。

投稿者: 小山晃法律事務所

2016.07.26更新

例えば、交通事故で顔面部に傷あとが残った場合、後遺障害による逸失利益を請求できるか、慰謝料はいくらになるのかという問題です。

これまで外貌の醜状について、男女を区別した上で、2段階に区分して等級を定めてきました。

【女子の場合】
 著しい醜状を残すもの 7級12号(労働能力喪失率56%)
 醜状を残すもの     12級15号(同14%)

【男子の場合】
 著しい醜状を残すもの 12級14号(労働能力喪失率14%)
 醜状を残すもの      14級10号(同5%)

上記のように男女を区別して女子の方が上位に置かれているのは、男子のそれと比較して就職、結婚はもとより、社会生活における外貌の持つ比重が高く、醜状によって受ける社会生活上の不利益や精神的苦痛が、社会通念上大きいと考えられるからです。

京都地方裁判所平成22年5月27日判決が出て、外貌の醜状障害に関する後遺障害等級表上の、著しい外貌の醜状で5級もの差が上記のように設けられていることについて、憲法14条1項の平等原則に反するとの判断を示しました。

これを受けて労災保険法施行規則の改正があり、後遺障害等級表も改定されるに至りました。平成22年6月10日以降に発生した事故については、次のように判断されます。

【男女の区別なし】
 著しい醜状を残すもの     7級(労働能力喪失率56%)
 相当程度の醜状を残すもの  9級(同35%)
 醜状を残すもの         12級(同14%)

後 遺障害の等級認定がなされると、原則としてその認定された等級表に対応する労働能力喪失率が適用され、逸失利益が算定されることになります。ただ、外貌の 醜状が直ちに減収や労働能力の減少に結びつくとは言えないことを考えると、(1)被害者の性別、年齢、(2)醜状障害の内容及び程度、(3)被害者の現在 または将来の職業への影響を考慮して、逸失利益の肯否と程度は判断されるべきです。

例えば、女子については、ホステス、営業担当者で、醜状障害によって現実に転職を余儀なくされたとか、将来転職する場合にその選択できる職業の範囲が著しく制限されたりする場合には、逸失利益が認められます。

男子についても、女子に比べて逸失利益が認められる場合は限られてきますが、それでも外貌醜状により、現在の職業や将来の就職に悪影響を及ぼす恐れがある場合は、逸失利益が認められます。どの程度の労働能力の喪失と見るかは、個別具体的に判断せざるを得ません。

後遺障害の慰謝料については、交通民事訴訟では新しく改定された後遺障害等級表に沿って男女とも積算されるのではないかと考えられます。

*三重県の情報サイト「とうけい」に掲載された記事です。

投稿者: 小山晃法律事務所

2016.07.26更新

休業損害とは交通事故で負傷し、その治療のために休業を余儀なくされ、その間収入を得ることができなかったことによる損害(得べかりし利益の喪失)のことです。

事故前の収入の基礎として、受傷によって休業したことによる現実の収入減が問題とされます。

休業損害は事故当時の収入額に、休業日数を乗じて計算されます。

(1)被害者が給与所得者の場合
休業期間と基礎収入は、勤務先会社の休業損害証明書(欠勤日数、事故直前3ヵ月の平均収入)や源泉徴収票により、休業の必要性や程度は症状の内容、程度、治療経過などから判断されます。

休業中、昇給、昇格のあった場合はその収入を基礎とし、休業に伴う賞与の減額不支給、昇給、昇格遅延による損害も認められる。

有給休暇を使用した場合も休業損害と認められます。有給休暇の使用日数枠が減るからです。

(2)被害者が商業等自営業者や税理士等の自由業者の場合
基礎収入は、前年度の所得税の確定申告書によって判断されます。

所得を過小申告している場合の問題があります。

所得の中に近親者の労働による利益が含まれている場合には、被害者の寄与分相当額を基礎とします。事業を維持継続するために支出を余儀なくされた家賃、従業員給与などの固定経費は損害と認められます。

(3)被害者が会社役員の場合
会社役員の報酬については、労務提供部分は休業損害として認められますが、利益配当の実質をもつ部分は休業損害として認められません。

(4)被害者が家事従事者である場合
賃 金センサスの学歴計・女性の全年齢平均賃金を基礎とし、受傷のため家事労働に従事できなかった期間につき、認められます。ただし年齢、家族構成、家事労働 の内容により、上記平均賃金に相当する労働を行えない場合には、学歴計・女性の対応年齢の平均賃金を参考にして決めざるを得ません。

パートタイマーや内職などの兼業主婦について、現実の収入額と女性労働者の平均賃金額と比較して、高い方を基礎として計算します。

(5)被害者が無職者の場合
事故前に現実に労働の対価である収入を得ていない以上、事故による減収はなく、休業損害は認められません。

*三重県の情報サイト「とうけい」に掲載された記事です。

投稿者: 小山晃法律事務所

2016.07.26更新

交通事故を起こした者に損害賠償責任が認められる場合、その損害額をどのように算定するのか、という基準の問題です。

損害額の算定基準が決められておれば、それに従って車社会の中で大量に発生する交通事故の損害賠償事件を迅速・公平に解決処理できるし、加害者、被害者にとっても、どれだけの額を賠償してもらえるか、しなければならないかが予測ができるというメリットがあります。

現 在、大きく分けると【1】自賠責保険(共済)における支払基準(人身事故)、【2】任意保険・任意共済における損害額の算定基準(人身事故)、【3】日弁 連交通事故相談センター編「交通事故損害額算定基準」(いわゆる青本、人身事故と物損事故)、【4】日弁連交通事故相談センター東京支部編「民事交通事故 訴訟・損害賠償額算定基準」(いわゆる赤本、人身事故と物損事故)があります。

自賠責保険の支払基準は、基本保障(最低保障)という自賠 責保険の性質を反映して金額は低く抑えられていますが、そのため過失相殺による減額はなされず、重大な過失(7割以上)がある場合、受傷と死亡・後遺障害 との因果関係の認定が困難な場合にのみ一定割合を減額されることになっています。

自賠責保険会社は、この支払基準に拘束されます(自賠法16条の3)が、被害者や裁判所は、この基準に拘束されません(最高裁判例)。

任意保険の算定基準は、平成9年3月保険の自由化により、これまでの各社共通の統一支払基準が撤廃され、各保険会社は個別に基準を作成しています。

いわゆる青本の支払基準やいわゆる赤本の支払基準は、裁判基準を示すものです。

任 意保険の算定基準は、自賠責保険の支配基準の上積みを目指すものですが、裁判基準であるいわゆる青本や赤本の各支払基準と比べると、かなり低い金額となっ ているようです。自動車保険(任意保険)会社から示される示談金額が、裁判基準と比べてかなり低いと言われる所以です。

また基準はあくまで指標の一つですから、具体的事件の個別性・特殊性にも、十分注意して運用されなければならないことは、もとより当然です。

*三重県の情報サイト「とうけい」に掲載された記事です。

投稿者: 小山晃法律事務所

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